使わないけれど必要なもの、消火器
私たちの生活の中で「ほとんど使う機会はないけれど、確実に備えておかなければならないもの」の代表格といえば、消火器でしょう。
家庭でもオフィスでも、普段は隅に置かれ、存在を意識しないかもしれませんが、火災時には命と財産を守る大切な道具となります。
ABC消火器とは
消火器の種類は、対応できる火災のタイプによって区別されています。
最も一般的なのは「粉末ABC消火器」で、これは木材や紙といった普通火災(A)、天ぷら油やガソリンなどによる油火災(B)、さらに電気製品や配線設備に起因する電気火災(C)の3種類に対応しています。
ひとつで幅広く使えるため、家庭にもオフィスにも設置されることが多い標準的なタイプです。
オフィスや事業所での消火器設置義務
家庭の場合、消火器の設置はあくまで任意ですが、オフィスや工場、商業施設などの事業所では「消防法」に基づいて設置が義務付けられています。
たとえば延べ床面積が一定以上の建物や、飲食店・店舗といった不特定多数の人が利用する施設では、消防設備として必ず消火器を備えなければなりません。
また設置するだけでなく、定期的な点検と報告も必要です。
特にビル管理や企業の総務担当者にとっては、消火器の設置と維持管理は法令遵守に直結する重要な業務といえるでしょう。
消火の際に大切なこと
消火器を使うときに一番大事なのは「無理をしない」ことです。
119番通報するとともに、周囲に声をかけ、助けを求めましょう。
そのうえで、まずは逃げ道を確保し、煙を吸わないようにタオルやマスクで口や鼻を覆いながら、火の根元を狙って消火します。
熱風によるやけどを避けるため、屋外では特に、風上に立たないことも基本です。
火が大きくなってしまい、自力での消火が難しいと判断したら逃げ出す勇気も必要です。
消火器の正しい操作
消火器の操作は、ピンを抜き、ホースを外して火元に向け、レバーを握るというシンプルな手順です。
ただし実際に使うときは緊張するものですから、手順を十分に理解しておくことが大切です。
持ち運ぶときは下のレバー部分を持ち、黄色い安全弁を握らないように注意します。
消火器は大きく傾けると薬剤が出にくくなるため、傾きは30度以内に保つことが望ましいとされています。
握る際には指を挟まないよう注意し、力の弱い方は消火器を床に置いて上からレバーを押す方法を取ると安心です。
自治体や企業が実施する防災訓練では、水を入れた訓練用消火器で放射体験をする機会があります。
実際の粉末消火器と比べると感覚は違いますが、操作の流れを体験しておくことは非常に有効です。
本番で初めて触れるよりも、はるかに落ち着いて行動できるでしょう。
企業では、従業員が年に一度の防火訓練に参加し、消火器の使用方法を体験することが推奨されています。
これは単なる形式ではなく、実際に「手に取って操作した経験」があることが、いざというときに役立つからです。
消火器の寿命と点検
消火器にも寿命があります。
家庭用では5~6年、業務用では10年程度が目安とされており、それ以降は安全に使用できない可能性が高まります。
オフィスやビルでは設置義務とともに、定期的な点検・報告義務が課されています。
消防設備士や点検業者による年1~2回の点検を怠れば、万が一の火災時に機能しないリスクがあるだけでなく、法令違反となる場合もあります。
一方、家庭用の場合は交換義務こそありませんが、やはり古い消火器の放置は危険です。
使わないものだけに、ついつい忘れがちですが、腐食による破裂事故なども報告されています。
定期的に買い替えることが安心につながりますね。
不要になった消火器は一般のごみには出せませんが、自治体が回収窓口を案内してくれたり、新しいものを購入する際にメーカーや販売店が引き取ってくれたりする場合があります。
自治体のホームページを見てみるとよいでしょう。
火災が発生せず、消火器を使う機会がないことが一番の理想です。
しかし、気をつけていても火災はあちこちで起きていますし、自分のところだけは安心とは言い切れません。
オフィスでも、家庭でも、消火器との付き合い方を改めて見直してみる価値はあるのではないでしょうか。
ビルにおいては、消火器だけでなくさまざまな消防設備の設置が必須となっています。
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